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一枚板はどうやってできる?~乾燥編~

皆様こんにちは。
一枚板のテーブルをメインに無垢家具を取り扱っている東京・目黒のインテリアショップ、BRUNCH一枚板店です。

一枚板ができるまでの「仕入れ」「製材」「乾燥」までを紹介しておりますが、今回は最後の項目、「乾燥」について詳く見ていこうと思います。

■一枚板はどうやってできる?~仕入れ編~
■一枚板はどうやってできる?~製材編~

一枚板が出来上がるまでの工程を知ることで、より好きになって頂けると思います。

それではどうぞ。

~ 一枚板ができるまで ~

③乾燥

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製材が済んだ板は次に乾燥させます。
原木には吸い上げられた水分が豊富に蓄えられており、未乾燥の材を「生材」と呼びます。
木材が含む水分量の目安となる含水率(※)を見ると、
弊社で取り扱っている広葉樹は生材の状態で平均70%前後の含水率、
針葉樹では300%以上の含水率の木もあり、伐採すると水が溢れてくる木もあるそうです。

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■含水率とは
木材に含まれる水分の割合を示す数値です。

計算式は
含水率(%)=(木材の乾燥前の重量(g)-乾燥後の重量(g))×100÷乾燥後の重量(g)

例えば200gの木材が乾燥して150gになった場合は
200-150×100÷150=33.333・・・
約33%の含水率ということになります。

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なお木材の含水率は水分の変化を捉えやすくするために、
水分を一切含まない木材そのものの重量を基準にして算出しているために、
100%を超える含水率になる場合も多々あります。

200gのウォールナットが乾燥して80gになった場合は
200-80×100÷80=150%の含水率になります。
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木材は含水率30%前後から収縮をはじめ変形や割れなど症状が表れ、
最終的にはいずれの木材も、最終的には水分の吸収・放出を最低限しか行わない
安定した状態になりますが、このときの含水率を「平衡含水率」と言います。
(変形や割れが生じる原因は繊維飽和点と異方性の関係によりますが、詳しいことは別の機会に)

家具を製作したあとに割れや反りが表れてしまうと商品に不具合が生じてしまいますので、
あらかじめしっかりと乾燥させ、最適な含水率まで下げた乾燥材を使用します。

気候・環境によって変動しますが、日本の平衡含水率は15%前後と言われていますが、
気密性の高く空調設備が整っている現在の住宅環境では、
室内の含水率はさらに低く10%前後まで下がっているため、
一枚板をはじめとした無垢材の家具も同様の含水率まで乾燥させていきます。

さて肝心の乾燥の方法ですが、

①天然乾燥
②人工乾燥

の順番で乾燥させていきます。

まずはじめの天然乾燥ですが、これは屋外または風通しのいい屋内で
「桟積み」をした状態で乾燥させる方法です。

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この方法では空気にふれている表面から少しずつ乾燥していきますので、
板と板を重ねてしまうと空気にふれる面が少なくなり乾燥が進みません。
また場所によって乾燥の進み具合に差が生じると割れや変形が起きてしまうため
なるべく多くの面が空気にふれるように板と板の間に木の桟を挟み、隙間を作ります。

割れが出やすい表面や木口には割れ止めの塗料を塗ったりカスガイを打ち込んだりしていきます。

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この天然乾燥は樹種によって乾燥の進み具合が変わるため数年かけて行う場合もあり、
じっくりと時間をかけ少しずつ含水率を下げていく方法のため効率は良くありませんが、
板にかかる負担を最小限に抑えることができます。
この際に風の抜ける向きに対して垂直に桟積みを置くと効率よく乾燥が進みます。

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■乾燥は樹種によって変わる
BRUNCHで取り扱っている材の中ではブラックチェリーは比較的乾燥が早く、
同じ北米材でもウォールナットは中心部分の乾燥が遅く乾燥に時間がかかります。
また一枚板で見ると、楢材の特に板目は乾燥の際に割れが非常に起きやすい木材です。
乾燥の話とは少し逸れてしまいますが耳部分も腐りやすいため
「一枚板」「耳付き」に限定すると入手が困難な材になります。
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また樹皮ですが、
樹皮をつけたままにしておくと虫が入り込み木を食べてしまうおそれがあるため、
乾燥させることで剥がしやすくなったこの段階で一枚一枚丁寧に樹皮を剥がしておきます。

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もちろん製材前に皮剥きの機械で剥がすこともできるのですが、
必要以上に耳部分を削ってしまうこともあるため、
可能な限り美しい耳を残すために可能な限りこの段階で取り除いています。
こういった手間暇があるからこそ、貴重な一枚板はさらに魅力的になっていきます。

こうして天然乾燥により時間をかけて少しずつ含水率を下げていくのですが、
天然乾燥のみでは平衡含水率の15%前後までしか下げることができないため、
続いて人工乾燥を行います。

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写真は少し分かりづらいですが、人口乾燥機の中に板を入れているところです。
機械というよりは温度・湿度などを調整できる倉庫の中に天然乾燥させた板を入れて
乾燥具合・含水率を調整します。

人工乾燥には様々な方法があるのですが、
写真では蒸気式の乾燥を行なっています。
ボイラーから発生した蒸気を送風機を使い庫内が一定に保たち仕上がりの含水率の均一を図ります。
ちなみに庫内は80℃ほどとかなりの高温になっています。

BRUNCHの一枚板は上記の蒸気乾燥に加え、さらに高周波乾燥機も使用しています。
これまで紹介した天然乾燥・蒸気式の人工乾燥は、表面からの乾燥方法でした。

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高周波乾燥の場合は私たちの生活の中で言えば電子レンジのような仕組みで、
内部から熱を加え、外に水分を蒸発させていきます。
これにより外部からも内部からも乾燥させることができ、
均一な含水率を保つことができます。

人工乾燥の期間は天然乾燥の1~数年にたいして数週間の乾燥で済みます。
ではなぜ最初から人工乾燥を施さないかというと、
急激な含水率の変化は、木に大きな負担がかかり割れや変形の可能性を増幅させてしまうためです。
なので、まずはゆっくりと天然乾燥で含水率を下げ、
そのあとに人工乾燥で現在の住宅環境にあわせた含水率に下げていく必要があります。

天然乾燥・人工乾燥が完了した板を水分計で含水率を測定してみると・・・

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9%です。しっかりと乾燥できていますね。

乾燥が無事完了した後は
板を外気に馴染ませるように2週間ほど桟積みする「養生」を経て
一連の工程が終了となります。

これでやっと一枚板のテーブルができる下準備が整いました。
ここからさらに表面の研磨、割れ等がある場合は補修、最後に仕上げ塗装と
さらに続いていきますが、それはまた別の機会にお伝えしようとおもいます。

2回に渡り一枚板ができるまでの流れをみてきましたが、いかがでしたか?
下準備にかける時間と丁寧さが
その板の出来に大きく影響を与えることが少しでも伝われば幸いです。

ただ仕入れて、ただ製材し、ただ乾燥させる。
それではいい板は出来上がりません。
自然が作りあげた美しい素材を、職人の手によって仕上げる。
もっと簡単で手早く出来る方法はいくらでもありますが、
最高の状態の一枚板を作り上げるためには途方もない時間と手間暇が必要です。
そしてこの工程があるからこそ一枚板は魅力的なのだと思います。
内面から伝わる美しさ、それも一枚板の最大の魅力のひとつですので
ぜひ一枚板が出来上がるまでの背景を思い浮かべながら
運命の一枚をお探し頂ければと思います。